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2021年8月23日月曜日

新着情報!


(公式コメント)
記事は、内容的にはとくに面白みのないものなのですが、アフガニスタン情勢関連でのパキスタンの位置づけが分かる記事だと思い紹介してみました。実際、パキスタンの動きは今後いろいろ注目されることになりそうです。

今回の事件の主役・タリバンは、アフガニスタン南部を勢力基盤とするイラン系パシュトゥーン人のイスラム教武装組織。そもそもこのパシュトゥーン人のイスラム教徒というのが非常に面白い存在で、イラン系であればシーア派であってもよさそうなものですが、彼らパシュトゥーン人の中では、自分たちこそが預言者ムハンマドに直結する、誇り高きイスラム教徒の正統派中の正統派だという意識があるのだとか。それは、彼らがもともと失われたイスラエルの10部族の一つであり、正統な「啓典の民」を自認していること。また部族の偉人の一人がムハンマドの開教時に直接彼に教えを受けに行き、民族に伝えたとの「伝承」があるからです。熱心な宣教者となってインドまでイスラム教を広めたという、その偉人の息子の名がアフガンだったことに因んで、彼に従ってイスラム教を受け入れたパシュトゥーン人をアフガン人ともいうようになったとのこと。アフガニスタンというのは、文字通り、そのアフガン人の国ということですから、アフガニスタンという名前がそのまま、スンニー(正統)派を自任しているアピールともなっているという訳です。

パシュトゥーン人には彼ら特有の「掟」のようなものがあって、1)部族間での復讐義務、2)窮地にあるものの保護の義務、3)女性・金・土地の保護の義務が、彼らの行動様式の根底にあるのだそうです。尚武主義的な民族で、武器の携帯は当たり前。男は武勲を立てて成り上がれ!という風潮だそうですから、、、日本の戦国時代みたいな感じでしょうか。内線が長期化したり、ビン・ラディンを匿ったり、女性の自由を認めなかったり(これは掟が逆に作用している感じですが、、、)といったもろもろのことも、イスラム教だから、というよりはむしろこのパシュトゥーン人の掟に起因するところが大きそうですね。

さて、そのパシュトゥーン人の中でカイバル峠もしくはボラーン峠を越えてインドに入っていったグループがあったのですが、その人たちが現在、パキスタンに暮らし、政財界に大きな影響力を持っています。その辺りから、タリバンとパキスタンの関係が出てくることになります。

2000年代初頭、タリバンと北部同盟との間のアフガン内戦の折、近隣諸国はそれぞれの思惑から対立する勢力の一方を支援することになります。パキスタンは当然同胞のタリバンの支援に回ります。一方でロシアは、パキスタンと対立するインドを引き込んで北部同盟側を支援します。そんななかに、アメリカが、「ビン・ラディンを匿った」とタリバンに因縁をつけて参戦。北部同盟と組んでタリバンを掃討。そのまま駐留を続けて現在に至っていたというわけです。

今般、そのときから駐留していたアメリカが撤兵することになったわけですが、当然予見される米軍撤兵後のタリバンの復権を見越して、主要関係国が集って対応を協議したのがトロイカ(米・露・中)会議で、そこにパキスタンが加わったのがトロイカプラスという訳です。
記事の中でパキスタンのクレシ外相がロシアのラブロフ外相に話していたトロイカプラスで緊密に連携していきましょう、というのはそういうことです。

ところで、3月にモスクワで開かれたトロイカプラスの会合には、当事者であるタリバンとアフガン政府の双方からも代表が呼ばれ、会議に参加していました。そのときのタリバン側の代表が、カタールのタリバンの対外代表部でずっとアメリカ当局と交渉していたバラダル副代表です。このバラダル氏、タリバンの首都カブール奪取後、早速中国に飛んで王毅外相と会談をしていた、あの人ですが、そんなことが可能だったのも、このトロイカプラスでのつながりがあったからでしょうね。

ところで、パキスタンは現在、中国と蜜月関係にあります。また、中国は今、日米豪印の「クアッド」に海洋進出を抑えられたこともあって、アラブの産油国と陸路パイプラインを結びたいと考えていました。そんな折、蜜月関係にあるパキスタンと関係が深いタリバンがアフガニスタンを掌握したことになります。アフガニスタンは中国とアラブを結ぶ一帯一路のライン上にポッカリと空いた最後の1ピースのような存在だったので、中国としてはこれは願ってもないチャンス到来、というところでしょう。

しかしながら、物事はそう上手いことばかりではないわけで、、、実はタリバンにはパキスタン軍を通じてウイグル人のイスラム教徒過激派の活動家が多く入り込んでいるらしく、その活動家たちが祖国で中国当局からの迫害を受ける同胞を助けるため、アフガンを根拠地として断続的にテロ行為を仕掛ける可能性があるのです。そうなると、中国がタリバン政権を援助すればするほど、逆に自国を攻撃するテロリストを育てる結果にもなりかねない。しかも中国は今、西欧諸国からのウイグル問題に関する突き上げを、「ウイグルに人権問題など存在しない」と突っぱねているところなので、ウイグルで強硬なテロ取り締まりはできないという事情もあります。上述のタリバン副代表と王毅外相との会談の中で、王毅外相が支援を表明しながらも、「テロリストの温床にならないように」と釘を刺していたのは、そういう背景事情があってのことだと思われます。

さらに事を厄介にしているのは、20年前のタリバン掃討戦の折、アメリカにむりやり付き合わされてアフガンのPKOに派遣させられたヨーロッパ諸国の派遣軍の存在です。なにしろ、アメリカ軍の撤兵は協力国に相談なく、アメリカだけで勝手に決めてしまったことなので、とり残されたヨーロッパ諸国はたまったものではありません。情報収集すらままならない、ということで、タリバン政権の「隣国以上の存在」であるパキスタンに頼らざるをえないのですね。

さて、インドはどうかというと、、、インドはパキスタンにも頼れないというのが辛いところですね。ただ対アフガン関係は幸か不幸か、そこまで緊密なものではなかったこともあって、直接的にはあまり切迫した状況にはなっていない模様です。インド国内ニュースの雰囲気も、アフガン情勢でてんやわんや、という感じは見受けられません。ただ、今後パキスタンの重要度が増すことで、インドの国際的地位が相対的に下がることになったとき、現在抱えている対パキスタン、対中国の懸案事項がどのようになっていくのか、、、はインドにとっての心配の種かもしれません。

日本は邦人救出のため自衛隊を出すと決定したみたいですね。大使館員は既に英軍機に乗せてもらって脱出したとのことなので、誰を「救出」に行くつもりなのか、という疑問は残りますが、、、もちろん十分慎重に検討した上での決定なのだと思いますが、間違っても政権の仕事してますアピールのために安易に出動するようなことは避けたほうがいいと思います。行くならば、常識が通るところではないということを踏まえた上で、専門家の助言をよく聞いて、万全の準備を整えて赴くようにしてもらいたですね。

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