第2回 もう一つのマイナー競技/カラリパヤットその2 武術と舞踊
インド留学前は佐保田ヨーガをやっていたのに、帰国すると太極拳を始めた。長拳にも挑戦した。時はバブルで金余り、また、日中友好を演出するため、京劇のみならず、四川省の川劇などの伝統演劇団や雑技団の来日公演が毎年のようにあった。彼等の立ち回りは中国拳法そのものである。
実際に映画「少林寺」の主役、李連傑は体育学院の出身なので武術の専門家だが、共演したヒロイン丁嵐は地方劇の戯芸院(演劇舞踊学校)出身である。伝統演劇のトレーニングには立ち回り、武術の訓練も含まれているから立派にこなしている。ケーララ州のカタカリ学校も、武術家養成とも思えるような厳しいトレーニングを積む。
1983年、ケーララの劇団ソーパーナムとカタカリ役者が自坊の延命寺に来た時には、カラリパヤットの型とカタカリの型の違いというのを表演してもらった。平成10年頃にはインドから来日した研究者によって、東インドの地方劇チョウとその基礎となっている武術パリカンダの違いを表演してもらったこともある。パリは盾、カンダは剣である。
オリッシー・ダンスの前提となる基礎訓練もクンクマ・ラールや高見麻子に見せてもらった。ほとんど武術の訓練である。バラタナーティヤムにしても同様の厳しい修練が必要で、現今のインド舞踊というのは基本的に男踊りの要素が強い。
伝統的に踊りの師匠、演出家は男であった。一方、女踊り、デーヴァダーシー系の動きというのはケーララ州のナンギヤール・クートゥやカタカリの女舞い、それに基づくモーヒニーアーッタムに継承されている。
また、東南アジアに目を向けるとインドネシア、マレーシアではプンチャック・シラットが盛んだ。男踊りや立ち回りの基礎になっている。もともとはインド系武術と思われるが、現今では中国拳法の影響が強い。ジャカルタで行われた2018年アジア競技大会では正式種目に選ばれ、インドネシアに金メダルをもたらした。日本からも選手が参加した。
3年後に名古屋で開催されるアジア競技大会は、予算不足のため種目の削減が叫ばれている。プンチャック・シラットどころかカバディまで消滅するかもしれない。インドでアジア競技大会が開かれることになったら、カラリパヤットは正式種目に選ばれるだろうか。
タイにはクラビ・クラボーンという様々な武器法も含めた武術がある。中国雲南省から伝わったというが、それはタイ族の故郷ということなのだろうか。その道場からムエタイの選手が出ている。もう日本でキック・ボクシングのテレビ中継を見ることはなくなったが、タイの選手は、試合前に伴奏と共にグルや神のために踊っていた。タイ舞踊の立ち回りは、武術そのままではなくて、ある程度様式化されている。ベトナム相撲も音楽が伴奏に付く。武芸も祝祭的で神に奉納するという性格がある。
カラリパヤットには関節技もある
タミル・ナードゥ州の棒術
盾と剣を振るうパリカンダ(ビハール州)
河野亮仙 略歴
1953年生
1977年 京都大学文学部卒業(インド哲学史)
1979年~82年 バナーラス・ヒンドゥー大学文学部哲学科留学
1986年 大正大学文学部研究科博士課程後期単位取得満期退学
現在 天台宗延命寺住職、日本カバディ協会専務理事
専門 インド文化史、身体論
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