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2023年11月28日火曜日

天竺ブギウギ・ライト⑦/河野亮仙

第7回 2023年第19回杭州アジア大会におけるインドとカバディ

40競技481種目という杭州アジア大会が無事閉幕した。この9月、10月はラグビー、バレーボールのワールドカップや様々な世界大会があって、注目度はいまいちだった。TBSが地上波独占中継をした。何回か、ちらちらっとカバディも放映された。

第二次世界大戦後初のオリンピックは1948年にロンドンで開催された。その時に日本は招待されなかったのだが、インド、フィリピン、朝鮮、中華民国、セイロン、ビルマの代表が協議してアジアでも競技大会を行う事を決めた。

栄えある第1回は、ニューデリーで1950年に行うことが決定された。実施競技は陸上、水泳、サッカー、バスケットボール、ウエイトリフティング、自転車の6競技なのだが、ヨーロッパに発注した競技用具が秋になっても届かないということで、翌年に延期された。

戦後間もない時期で混乱もあったかもしれないが、おそらくは競技施設が間に合わないとか、連絡ミスとかインド側の不手際だろう。半年遅れの51年3月に開催され、日本も参加することが出来た。日本チームは57種目中24種目で金メダルを獲得し、11カ国中最高の成績を収めた。

54年第2回はマニラ、58年第3回は東京で開催され、64年のオリンピック招致に弾みを付けた。ニューデリーでは1982年にも開催されたが、組織運営の出来ないインドでは、その後行われていない。

20世紀においてはバンコクで4回行われて貢献度が高い。韓国では3回、その後中国の経済成長によって3回行われ、日本は東京、広島に続いて2026年に名古屋で開催される。その後はドーハ、リヤドが予定されて、インドは手を挙げていないようだ。

オリンピック新種目

一方、2028年のロサンゼルス・オリンピックではラクロス、スカッシュ、フラッグフットボール、クリケットが競技種目に選ばれた。インドは2036年にオリンピック招致を目指している。

10年あれば競技場は作れるかもしれないが、冬に夏季大会をやるのでなければ無理だろう。エアコンを入れればというが、マラソンはカシミールでやるつもりか。コースが作れないだろう。競技場の前に発電所を作らないと停電する。

また、ニューデリーの大気汚染は最悪で、ガス室にいるようだといわれる。インフラ面でまだまだ課題は多い。カバディもあと10年で積極的に世界中に広めないと、オリンピックの競技種目には選ばれない。

ちなみに釜本邦茂がエースだった1970年のバンコク大会では岡野俊一郎が代表監督。10日間で7試合行う強行日程で、日本はビルマに敗れたインドと三位決定戦を行って敗れている。半世紀前の話だ。

インドのサッカーリーグに日本人選手も参加しているという話も聞いたが、現在はどうなのだろう。わたしは79年8月から82年1月までバナーラス・ヒンドゥー大学に留学していたが、まず、大学の運動場でスポーツをしているのを見た記憶がない。あ、玉蹴りをしているな、という記憶がかすかにあるが、サッカーの試合ではない。

町で見るのは草野球ならぬ草クリケットである。カバディで子供が遊んでいるのも見た覚えがない。インドのスポーツはそんな状況だが、今日では強化に取り組んでいるようだ。

ロス五輪では大谷効果なのか野球が復活する。英国連邦で広まったクリケットの競技人口はサッカーに次ぐというが、その多くはインド人ではないか。1980年モスクワ・オリンピックの頃からインドはクリケット、ソ連はサンボを競技種目に入れるのが夢だった。2018年のジャカルタ大会以来、サンボではなく、ウズベキスタン発祥の民族格闘技クラッシュがアジア大会の競技種目として選ばれている。

クリケットの日本における競技人口は4000人というからカバディより多い。競技人口というのが大会に参加する選手数というなら、カバディはその十分の一だ。栃木県の佐野市がクリケットの聖地で専用グラウンドがある。町興しのようにして商工会議所がバックアップし、サポータークラブには100社超が参加している。

市役所も巻き込んで、グラウンドの用地や助成金で助けてもらっている。日本代表の世界ランキングは50位前後。その点では日本カバディの方が上だが、世界50カ国でカバディをやっているかというと難しい状況なので、オリンピック参加は夢のまた夢。カバディ協会も参考にしないといけない。

https://www.youtube.com/watch?v=10W1NrgfVko&t=91s

日本カバディの課題

さて、今回の杭州大会での結果は予選敗退。日本はAリーグのインド、バングラデシュ、チャイニーズ・タイペイ、タイの組に入った。Bリーグはイラン、韓国、パキスタン、マレーシア。

初戦の対バングラデシュ戦が1、2分テレビで放映されたが、全くかなわず、52対17で破れた。チャイニーズ・タイペイとは互角、タイには勝てると踏んだが、どちらも破れた。選手の怪我や体調不良もあったが、負けは負けである。池江選手がインフルエンザにかかって不調と伝えられたが、実は選手村でコロナも蔓延していて、密かに帰国する選手も少なくなかった。

どうしてもインド、パキスタン、バングラデシュ、イランにはかなわないので、現時点で決勝リーグ進出は難しい。この4チームは体格が大きく足腰が強い。インドのプロ・カバディの上位チームのレベルなので、学生カバディの延長でやっている日本チームは到底かなわない。今回はベテランと若手がかみ合っていいチームだと思ったのに残念である。チャイニーズ・タイペイがバングラデシュに勝って決勝リーグに進出したが、中国拳法等の格闘技出身選手が多く、バングラデシュに力負けしない。

3年後の名古屋大会ではベテラン3人が抜ける事が予想される。TBSの番組でアジア発の競技に体当たり取材した杉谷拳士は、カバディが一番面白かったというので、今後の普及と強化に期待したい。イラン人のような長身の攻撃手、怪我を押して試合に出場するラグビー選手のようなフィジカルの強い選手が望まれるが、日本チームは線が細い。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/e4d00062113a21c7bb7a488a3066d288085030c5

カバディ決勝戦は判定でもめて中断したが、辛くもインドがイランから金メダルをもぎ取った。前回はイランが優勝したのでようやく面子を保った。3位はチャイニーズ・タイペイとパキスタンである。日本とチャイニーズ・タイペイは遠征でも接戦で、いつもいい勝負をしているだけに残念である。女子の部は、今回、日本は参加できず、インドが優勝。チャイニーズ・タイペイが2位、イランとネパールが3位。

今回の杭州アジア大会においては、インドのお家芸であるカバディ、クリケットのほか、メダルを増産した。女子5000メートル走では、ゴール前で廣中瑠梨佳選手をかわし、0.59秒差でインドのチャウダリー選手が優勝するなど、陸上選手の活躍が目立つ。男子1600メートルリレーでは61年ぶりのインド優勝。男子やり投げでもインドが1、2位となった。

金メダル獲得数は中国201、日本52、韓国42に次いでインドは28である。アジアの陸上王国を目指してオリンピックに臨みたいようだ。

 

河野亮仙 略歴

1953年生

1977年 京都大学文学部卒業(インド哲学史)

1979年~82年 バナーラス・ヒンドゥー大学文学部哲学科留学

1986年 大正大学文学部研究科博士課程後期単位取得満期退学

現在 天台宗延命寺住職、日本カバディ協会専務理事

専門 インド文化史、身体論



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